2009/06/07
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象。深い智慧の光を優しい眼差しの奥に宿したこの地上最大のほ乳類は、今まで数多くのアート作品内に描かれてきました。
少年仏教僧が水上で黙想しているその周囲を、同様に思索的な佇まいで取り囲んでいる写真作品はグレゴリー・コルベールの手によるものです。宗教的叡智のシンボルであるかのように活写された象たちの姿は、数ある象アートの中でも際だった代表作だと思います。
一方、アメリカのフォトグラファー、ウィリアム・ウェグマンが愛犬「マンレイ」に様々な扮装をほどこして撮影した一連のシリーズ中に「象の鼻を装着したマンレイ」の作品があります。
これはウェグマンの作品集の表紙にもなった有名な写真なのですが(実は「ぞりん」完成後にその存在を知りました)、ここでのマンレイ(犬です)の様子は、その意に反して(?)象のフリを強制されてとまどっている道化のようにも見受けられます。
本来、敬虔で深遠な仏教僧のように見える象なのですが、その象徴でもあるあの長い鼻を取り付けた犬はなぜかものすごく滑稽に見えてしまう。
この不思議な現象は「ぞりん」の全ての画像を通じて全く一致したテイストではないかと思っています。
さて、そもそもこの「ぞりん」は、「無意味のラディカリズム」を追求することに関しては当代随一の石黒謙吾さんに奨めていただいて、作者が一時期まるで取り憑かれたように「動物に象の鼻を付け続けて」制作した本です。
また、その原点になったのはmixi内の「ぞりん」コミュニティなのですが、とにかく「象の鼻を付け続ける」クレイジーなコミュニティです。
やがて何がどう間違ったのか、気が付けば、「ぞうぶつ学」を巡る恐るべき仮説をまとうことで、こんな奇妙な本が産声を上げることになりました。
そして、これをご覧になる皆様は、きっと神話世界や伝説伝承に登場する数え切れないキメラ生物群が発する幻惑的な輝き、架空生物のもたらす無限のファンタジーを連想されるのではないでしょうか?
考えてみると、私たち人類を含めて地球上の生物というのは本当に不思議だらけです。本当に奇妙な形態をしています。
実は、「ぞう」+「きりん」=「ぞりん」なんて変な演算処理なんてしなくても、そもそもが異常です。極めて変態です。
でも、日常的にいちいちそんなことを考えているとたいそう面倒ですしなかなか大変だったりするとも思いますので、この本のページをめくっている間だけでもそんなイリュージョンを最大限に味わっていただければ..と、切に願っています。